主なパワハラ判例

上司の注意指導等とパワーハラスメ ント

(東京地裁八王子支部判決平成 2 年 2 月 1 日 労判 558-68)

概 要:
製造業 A 社の工場に勤務していた B の後片付 けの不備、伝言による年休申請に対し、上司 C がBに対して反省文の提出等の注意指導を行っ た。B は「上司 C の常軌を逸した言動により人 格権を侵害された」と主張して A 社及び上司 C に対し、民事上の損害賠償請求をした。

判決内容:
上司には所属の従業員を指導し監督する権限があり、注意し、叱責したことは指導監督する上 で必要な範囲内の行為とした上で、本件の場合は、上司 C の、反省書の作成や後片付けの再現 等を求めた行為は、指導監督権の行使としては、裁量の範囲を逸脱し、違法性を帯びるに至るとして、A 社と上司 C に対し不法行為(民法)709 条)に基づき、連帯して15 万円の損害の賠償をするよう判示した。

 

先輩によるいじめと会社の法的な責任

(さいたま地裁判決平成 16 年 9 月 24 日 労判 883-38)

概 要:
D 病院に勤務していた看護師 E は、先輩看護師 F から飲み会への参加強要や個人的用務の使い 走り、何かあると「死ねよ」と告げたり、「殺す」などといった暴言等のいじめを受け、自殺した。

判決内容:
判決では先輩看護師 F の E に対するいじめを認定し、先輩看護師 F に E の遺族に対する損害を 賠償する不法行為責任(民法 709 条)と、勤務先である D 病院に対し、安全配慮義務の債務不 履行責任(民法 415 条)を認め、先輩看護師 F が E の遺族に対し負うべき損害賠償額を 1,000 万円と命じ、D 病院に対して、先輩看護師 F と 連帯して500万円の損害を賠償するように判示した。

内部告発等を契機とした職場いじめと会社の法的責任

(富山地裁判決平成 17 年 2 月 23 日 労判 891-12)

概 要:
勤務先 G の闇カルテルを新聞や公正取引委員会に訴えた H へ、転勤や昇格停止、長期間にわた る個室への配席等を行った G 社に対し、Hが損害賠償請求をした。

判決内容:
判決は、人事権行使は相当程度使用者の裁量的判断に委ねられるものの、裁量権は合理的な目 的の範囲内で、法令や公序良俗に反しない程度 で行使されるべきであり、これを逸脱する場合 には違法であるとして、不法行為(民法 709 条) 及び債務不履行(民法 415 条)に基づく損害賠償責任を認め、請求を一部認容し、慰謝料 200 万円、財産的損害 約 1,047 万円、弁護士費用 110 万円の損害の賠償をするように判示した

肉体的・精神的苦痛を与える教育訓練と上司の裁量

(仙台高裁秋田支部判決平成 4 年 12 月 25 日 労判 690-13)

概 要:
鉄道会社 I に勤務する J は労働組合のマークが 入ったベルトを身につけて作業に従事していたところ、上司 K が就業規則違反を理由に取り外しを命じ、就業規則全文の書き写し等を命じ、手を休めると怒鳴ったり、用便に行くことも容易に認めず、湯茶を飲むことも許さず、腹痛により病院に行くことも暫く聞きいれなかった。

判決内容:
就業規則の軽微な違反に留まるベルト着用に対し、就業規則の書き写しを命じたことは合理的 教育的意義を認めがたく、J の人格を徒らに傷 つけ健康状態に対する配慮を怠るものであったこと、教育訓練は見せしめを兼ねた懲罰的目 的からなされたものと推認され、目的においても不当なもので、肉体的精神的苦痛を与えて J の人格権を侵害するものであるとして、教育訓練についての企業の裁量を逸脱、濫用した違法なものであるから、上司 K 及び I 社に対し、不法行為(民法 709 条)と使用者責任(民法 715 条)による損害賠償責任を認め、慰謝料 20 万 円と弁護士費用 5 万円の損害の賠償を判示した。

退職勧奨とパワーハラスメント

(大阪地裁判決平成 11 年 10 月 18 日 労判 772-9)

概 要:
L は航空会社 M の客室乗務員であったが、通勤途中の交通事故による欠勤後、M 社から就業規 則上の解雇事由に該当するとして、約4か月間・30 回以上にわたる退職勧奨を受け、解雇されるに至った。この M 社の行為に対し、L から 人格権侵害による損害賠償請求がなされた。

判決内容:
本件解雇は、就業規則に規定する解雇事由に該当せず、M社の対応は、頻度や面談時間の長さ、 L に対する言動など、社会通念上許容される範囲を超えて単なる退職勧奨とは言えず、違法な退職強要として不法行為(民法 709 条)と認め、 退職強要に対する慰謝料 50 万円、弁護士費用 5 万円の損害の賠償を判示した。