助成金が取れない就業規則

就業規則の作り込み過ぎは損をする!?

就業規則は会社を守る極めて重要なルールブックです。

規定すべき条文が不足しているような弱い就業規則は論外ですが、逆に作り込み過ぎてもいけないんです。

助成金にあまり力を入れていない社労士やその他士業やコンサルタントが作る規則にはその傾向が強く出ているようです。

また、「運用しやすい」に徹した条文の作り方が必要です。

社内秩序のために作成したつもりが、実は、会社の首を自ら締めるようなルールばかりでは意味がありません。

以下、具体例でご紹介いたします。

おすすめできない典型パターンその1

福利厚生を充実させている。

一見、良い規則のように思われますが、福利厚生は助成金と直結することが多いのです。

助成金は、「このような福利厚生を導入しませんか?でも、導入にはお金が掛かりますから、国の雇用政策に賛同して、指定する福利厚生を導入した事業主様には助成金をお出しします。」といった主旨が多いのです。

一般的な助成金は、労働局に計画届を提出し、その計画認定を受けてから、計画通りに就業規則に規定し、実際にその規則に従って制度を導入したうえで、実行します。

これらのプロセスを書類にして申請することによって、支給されるという制度です。

ですから、ある制度を導入して助成金を獲得しようとしたら、ご丁寧にも既にその制度が就業規則に定められていたりすると取り組むことはできない、つまり、助成金を獲得できないということになります。

企業を守るために直接関係のない福利厚生の要素の強い条文は、最初に作る就業規則には規定しない方がよいでしょう。

おすすめできない典型パターンその2

会社に義務を課している条文がやたらに多い。

これは何かと言いますと、例えば、試用期間の規定があるとします。通常「3カ月間が設定されており、3カ月間延長が可能、または試用期間を設けないことができる。」とされていることが多いです。

ここに、「試用期間を延長する場合は、その旨を2週間前までに本人に通知する。」などと規定されていたら要注意です。

一見、当たり前のように見えますが、とても危険な文章になっています。それは、「2週間前までに通知しなければ延長された試用期間は無効、もしくは、延長そのものが不可能。」ということになるからです。

試用期間は、解雇トラブルを回避するうえでは、極めて重要な規定です。

条文中には、「試用期間中、以下に該当する場合は、本採用しない。」という規定を盛り込み、試用期間の終了時に本採用しない(事実上は解雇)ことによって、解雇リスクのハードルが格段に下がるのは事実です。

なぜかと言いますと、法人には「社会的責務、役割があり、勤務態度が大変悪い従業員でも、せめて、試用期間中は指導に当たり更生を試みても良かったのではないでしょうか。」という見方をされてしまうからなのです。

また、こんな規定も要注意です。

「懲戒処分は、その対象となる者から意見を聴取してこれを行う。」

もう、お分かりですね。そう、意見聴取をしなかった懲戒処分は、要件を満たしていないことになりますから「無効」として「処分の撤回」を求められる可能性が高くなります。

処分対象者が無断欠勤で音信不通であった場合や警察に身柄を拘束され、面会禁止になっている場合などは、意見聴取が不可能または困難な場合が多いです。

ちょっと気を利かした規定を作ったつもりが、実は、会社の首を自ら締めてしまうとんでもない規定であることも少なくはございません。

おすすめできない典型パターン3

いたるところで有給・無給が明記されていない。

特に問題になりやすいのが、休暇に関する規定で、有給・無給が明記されていないとトラブルのもとになりやすい傾向にあります。

その中でも育児休業関連は長期間にわたることが多いため、ここが有給か無給かの違いは、一人当たり簡単に100万円単位の違いになってしまいます。

ノーワークノーペイ、つまり、働いていなければ賃金の支払いは必要なしという大原則がありますので、産前産後休業や育児休業期間中の全く出社しない期間については、無給とされるのが一般的です。

また、その間の所得は出産手当金や育児休業給付金によってある程度カバーされますから、あまりトラブルにはなりません。

問題は育児期間中の時短制度や看護休暇などです。

今まで、なんとなく賃金の控除忘れで運用してきたり、明確な基準やルールがなかったりすると、ノーワークノーペイでは必ずしも片付かないこともございます。

ですから、そのような既定の条文には必ず既定の次の項で「前項は無給とする。」と明記しておきましょう。

おすすめできない典型パターン4

「繰り返し」、「再三にわたり」、「著しく」、「重大な」はできるだけ使用しない。

これらは、懲戒規定に散見されます。

なぜ、おすすめできないかといいますと、例えば遅刻や無断欠勤のところに「繰り返し」と規定されていた場合、遅刻や無断欠勤を繰り返し行わないと処分ができないことになります。

これでは、遅刻を一度もしたことなく真面目に働いている人にとって、不平等な就労環境となってしまいます。

同じような理由で、再三にわたったり、著しかったり、重大でない限り、会社が人事権を発動できないようでは、会社は自らの首を締めているというになります。

また、発動したらしたで、「再三にわたっていない」、「著しいとは言えない」、「必ずしも重大ではない」などという理由から懲戒処分の撤回を求められるきっかけになりやすい傾向にもあります。

おすすすめできない典型パターン5

不要な変形労働時間制を導入している。

実際の日々の勤務は9時~18時で、土日休みという会社で、変形労働時間制の条文が規定されている例がございます。

厚労省のモデル就業規則をそのまま利用したために起こる現象かと思いますが、この変形労働時間制は、助成金申請要件の邪魔になることがあります。

もともと変形労働時間制は、世の中のあらゆる会社の働き方に柔軟に対応するために後から特例として設置された規定が多いのです。

働き方改革によって多様な、柔軟な働き方や休み方の政策が推し進められるなかで、全く機能していない変形労働時間制は、条文に入れる必要がございません。

おすすめできない典型パターン6

努力義務を義務として規定してしまっている。

労働基準法をはじめとする労働関係法令では、あらゆる部分で大企業は義務、中小企業は努力義務または当面の間は猶予されるという規定がございます。

努力義務と義務とでは大きな違いがあります。

努力義務はあくまでも、「努力しましょう。」ですが、義務は「しなければ、なりません。」なのです。これでは大分違います。

モデル就業規則をそのまま利用してしまうと、中小企業は努力義務だったり、猶予されている規定まで記載されていることが多いので、そのままモデル就業規則を利用してしまうと様々なコスト面でのリスクを抱えることになります。

例えば、メンタルヘルスチェックがあります。これは従業員50名以上の事業所に課せられた義務です。

ここでちょっとご注意いただきたいのは、一事業所で50名ということです。

本社は30名、営業所は5か所で30名、合計60名である場合は、義務の対象外ということになります。

また、残業時間の割増賃金で、月の残業時間が60時間を超える部分の割増賃金です。

50%の割増が必要になるのは大企業です。中小企業は25%で問題ございません。

お分かりいただけたでしょうか。

少し挙げただけでも、助成金作成の重要ポイントはこれだけございます。

もちろん、注意すべき事項は細部にわたりますから、この程度ではとても収まりません。

モデル就業規則をそのまま使ったり、ましてや、ネットから拾ってきたり、他の会社の就業規則をそのまま流用したりするのは絶対にやめましょう。

会社の根幹を揺るがしかねないルールブックです。

それなりの投資をお勧めいたします。