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育児休業後の報酬月額変更届の提出と注意点 

育児休業を終えた従業員が職場に復帰した場合には、報酬月額を変更できる場合があります。1等級以上で改定が可能になるなど、随時改定と異なる点も少なくありません。また、届け出の提出は任意のため、被保険者の要望に合わせて実施を検討しましょう。 

育児休業後における報酬月額改定のポイント 

昇給や降給などで固定的賃金が減り、以下の条件に当てはまる場合には報酬月額の随時改定が検討されます。 

  • 変動月以降引き続く3カ月の支払い基礎日数が17日以上である 
  • 変動月から3カ月間の報酬平均額と、変動した報酬月額に2等級以上の差がある 

上記の場合には、月額変更届を提出することで報酬月額の随時改定が行えます。 

一方、育児休業後に復帰した従業員は、残業が減ったり時短勤務になったりといった理由で給与が下がるケースが少なくありません。こうした事情に合わせるため、「育児休業等終了時報酬月額変更届が用意されています。ポイントは、「1等級以上でも改定ができる」という点です。 

要件は以下です。 

  • 被保険者が育児休業等終了時に3歳未満の子を養育している 
  • 被保険者が育児休業等終了時報酬月額変更届の提出を希望している 
  • 従来の標準報酬月額に比べ、改訂後の標準報酬月額に1等級以上の差が発生する 
  • 育児休業終了日の翌日(以下、職場復帰日)が属する月以後3カ月のなかに、1カ月における支払基礎日数が17日以上ある(※12 

1特定適用事業所に勤務する短時間労働者の場合は11日 

2短時間就労者(パート・アルバイト)で3カ月すべてが17日未満の場合は15日以上の月の平均で計算 

上記の要件を満たし「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出した場合には、職場復帰日が属する月以後4カ月目の標準報酬月額を改定できます。 

通常の随時改定との違いをまとめると、以下のようになります。 

 

通常の随時改定 

育児休業終了後の改定 

基礎期間 

固定的賃金の変動月以後3カ月間 

職場復帰日が属する月以後3カ月間 

17日未満の月 

17日未満の月がある場合は随時改定をしない 

17日以上の月が少なくとも1月あれば改定する 

等級差 

2等級以上 

1等級以上 

改定月 

固定的賃金の変動月から4カ月目 

職場復帰日が属する月以後4カ月目 

育児休業等終了時報酬月額変更の計算方法と対象・適用期間等 

次に、具体的な「育児休業等終了時報酬月額変更届」の提出に関わる解説です。対象・適用期間や提出先等についてまとめました。 

計算方法 

職場復帰日が続する月以後3カ月間の報酬総額を、同期間の月数で割って標準報酬月額を計算する。 

例)職場復帰日が2月の場合で、「2月報酬:15万円」「3月報酬:20万円」「4月報酬:22万円」の場合 

(15万円+20万円+22万円)÷3カ月=19万円(標準報酬月額) 

対象期間の注意点 

基礎日数が17日未満の月がある場合は、その月を除きく。たとえば職場復帰日が2月20日で、基礎日数が17日以下の場合は、4月・5月の平均を標準報酬月額とする。 

適用期間 

適用期間は復帰日が属する月から数えて4ヵ月目から、その年の8月まで。なお、改定月が7〜12月の場合には翌年の8月までとなる。 

提出先 

事業所の所在地を管轄する日本年金機構および健康保険組合 

提出時期(期限) 

速やかに 

提出物 

健康保険・厚生年金保険育児休業等終了時報酬月額変更届 厚生年金保険 70歳以上被用者育児休業等終了時報酬月額相当額変更届 

報酬月額変更届を出さないケース 

育児休業後の報酬月額変更届の提出は、被保険者の任意です。状況によっては、提出をしないケースも考えられます。以下はその代表的な理由例です。 

受け取れる年金額が減るのを懸念するケース 

将来受け取れる年金額は、納付した保険料の総額から計算されます。報酬月額を変更することで総額が減り、合わせて給付額が減る点を懸念される方もいらっしゃるでしょう。 

ただし、厚生年金については「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」を利用することで、デメリットを回避できます。育児休業後の報酬月額変更届の提出を従業員が拒む場合は、この点を説明しておきましょう。 

健康保険の傷病手当金や出産手当金を懸念するケース 

健康保険における傷病手当金や出産手当金は、標準報酬月額を基に計算されます。厚生年金のような特例は用意されていないため、支払い額が減ればその分、受け取れる手当金が少なくなる可能性があるのです。 

たとえば第二子出産の予定がある場合は、報酬月額変更をしないほうが出産手当金を多く受け取れるケースも考えられます。 

随時改定を行ったほうが保険料を抑えられるケース 

多くの場合、育児休業後の報酬月額変更届を提出するほうが、保険料の支払いを安く抑えられます。一方、以下のようなケースでは、改定をしないほうが負担額を軽減できる可能性があります 

  • 復帰日:5月25日(基礎日数が17日未満) 
  • 報酬:54万円 / 【627万円 / 【723万円 

上記の条件では、5月を除く6月・7月の総額から計算することになるので、標準報酬月額は26万円になります(CASE:A) 

ここでポイントになるのは、7月から給与が4万円下がっている点です。理由としては、育休から復帰した社員が7月から時短勤務になったケース等が考えられます。もしも7月以降、この給与額が続く場合には、7・8・9月の給与総額から算出し、10月に改定をすることで標準報酬月額を24万円にできます(CASE:B) 

CASE 

計算 

標準報酬月額(報酬月額)※3 

A 

(【6月】27万円+【7月】23万円)÷2カ月=25万円 

26万円(25万円以上27万円未満) 

B 

(【6月】27万円+【7月】23万円+【8月】23万円÷3カ月=24万3,333円 

24万円(23万円以上25万未満) 

3東京都の令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表 

なお、10月の時点で随時改定を行った場合でも、2等級以上の差が生じないため変更は行えません。稀なケースではありますが、上記のように復帰後、時短勤務などで給与が下がる場合には注意が必要です。 

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