離職票の書き方
退職者から「離職票(雇用保険被保険者離職票)」の発行を求められたら、会社側は各種書類を揃え、ハローワークに提出する必要があります。この際に必要となる「離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)」の書き方を解説します。
離職票は離職証明書を基に作成される
離職票は退職者が記入・使用する書類であり、会社による記入は原則不要です。ただし、離職票は会社が作成する離職証明書を基に作成されることを覚えておきましょう。
離職証明書と離職票は、3枚1組の複写式です。
- 離職証明書(事業主控)
- 離職証明書(安定書提出用※ハローワーク提出用)
- 離職票-2
会社が記入するのは「離職証明書(事業主控)」です。つまり、離職証明書への記入は、そのまま離職票への記入とも言えます。
手元に用意する書類
離職証明書をスムーズに記入するための準備として、以下の書類等を手元に用意しましょう。
- 退職者の労働者名簿
- 退職者の雇用保険被保険者証
- 退職者の賃金台帳
- 会社のゴム印 ※任意
離職証明書の書き方
離職票の基となる離職証明書には、会社が記入すべき14項目の欄が設置されています。各項目の概要や書き方を解説します。
- :被保険者番号
退職者の被保険者番号(4桁-6桁-1桁の計11桁)を記入します。雇用保険被保険者証に記載された番号を転載してください。
なお、退職者が1981年7月6日以前に雇用保険へ加入していると、上下段に分かれた16桁の被保険者番号が採番されています。この場合は、下段の10桁を左詰で記入してください。空いている1枠はそのままで構いません。
- :事業所番号
会社の雇用保険適用事業所番号(4桁-6桁-1桁の計11桁)を記入します。雇用保険被保険者証に記載された番号を転載してください。
- :離職者氏名
退職者の氏名を記入する欄です。
- :離職年月日
退職者の最終在籍日を記入します。なお、ハローワークに合わせて提出する「雇用保険被保険者資格喪失届」と原則同じ日付にしてください。
- :事業所および事業者の名前・住所・電話番号
自社の情報を記載します。直接記入でもゴム印でも構いません。ただし、ゴム印は複写となりませんので2・3枚目への押し忘れにご注意ください。
なお、以前の様式にあった事業主印の押印欄は現在廃止されています。旧様式の用紙を使う場合であっても、押印は不要です。
- :離職者の住所又は居所(+電話番号)
労働者名簿などを参照し、退職者の住所を記入してください。
住所は退職時点のものが原則です。ただし、本人から希望がある場合は、変更後の居所を記載しても構いません。たとえば、退職後に引っ越しをして退職者の居住地が変わる場合などが挙げられます。これは、失業給付の手続きが「居住地を管轄するハローワーク」でしか行えないからです。
引っ越し先が不明・未定の場合は、退職者本人がハローワークで「受給資格者氏名・住所変更届」を行う必要があります。二度手間になるため、できれば記入時に住所を確認・確定できているのが望ましいです。
- :離職理由・事業主記入欄
退職の理由を記載します。
退職理由一覧の中から該当の理由を選び、左枠(※事業主記入欄)の□内に○印を記入します。なお、一部の理由には()で囲われた記入欄が設けられています。該当する理由を選んだ場合は、記載漏れに注意しましょう。その後、「具体的事情記載欄(事業主用)」へ、詳細な退職理由を記入してください。
退職理由は、ハローワークが「特定受給資格者」と「特定理由離職者」を判断するのに重要な項目です。該当理由の選択と具体的事情の記載は、十分に考慮した上で行いましょう。判断が難しい場合は、社会保険労務士に相談するのがおすすめです。
なお、退職理由によっては添付する資料が変わります。
離職理由 |
添付書類 |
事業所の倒産等 |
倒産手続き申し立てが受理されたことを証明する書類等 |
労働契約期間満了 |
労働契約書、雇入通知書、契約更新の通知書、タイムカード等 |
早期退職優遇制度、選択定年制等 |
制度の内容を確認できる資料等 |
移籍出向 |
移籍出向を証明する資料等 |
解雇等 |
解雇予告通知書、退職証明書、就業規則等 |
職場事情を基に労働者自身が判断 |
労働条件を記した労働契約書や賃金台帳等 |
労働者の個人的な事情(一身上の都合、転職) |
退職願や、内容を確認できる資料等 |
いずれにも該当しない理由 |
内容を確認できる資料等 |
- :被保険者期間算定対象期間
被保険者の属性により記載欄が異なります。
A欄は一般被保険者・高年齢被保険者に該当する場合です。「離職日の翌日」の欄に、「④離職年月日」の翌日の日付を記載します。それ以下に、過去2年間で退職者が被保険者であった期間を過去12カ月に遡り記載します。なお、勤務日が10日以下の場合や、産休・休業・海外勤務といった理由で30日以上賃金が支払われていない場合は、該当月を除いてください。
B欄は短期雇用特例被保険者に該当する場合です。同様に、過去12ヶ月に遡り、被保険者であった月を記載してください。
- :⑧の期間における賃金支払基礎日数
賃金の支払い対象となる日数を記載します。
- 月給制の場合:実労日数ではなく、全日数を記載
- 日給・時給制の場合:実労日数を記載
なお、欠勤などがある場合は、完全月給制・日給月給制・日給制または時給制など、会社の給与制度によって記載方法が変わります。以下は、その代表例です。
完全月給制 |
欠勤日も含め、暦日数を記載 |
日給月給制 |
1日あたりの控除割合で日数を計算し記載 |
日給制・時給制 |
実労日数に有給休暇日数を加えた日数を記載 |
- :賃金支払対象期間
「⑨:⑧被保険者期間算定対象期間」に対応する給与締め期間を記入していきます。なお、次項の基礎日数が11日以上となる月が6カ月以上あれば、以降の記載は省いて構いません。
また、締め日を越える前に退職した場合は1カ月に数えず、前月分の締日~離職日を記載して、次項でその分を減らしてください。結果的に、「⑧の期間における賃金支払基礎日数」と日数が変わりますが、間違いではありません。
- :⑩の基礎日数
賃金支払いの基礎日数を記入します。ここには、有給休暇や休日出勤、半日出勤も含まれます。なお、「⑨:⑧の期間における賃金支払基礎日数」と同じく、月給制は全日数、日給・時給制は実労日数を記載します。
- :賃金額
賃金台帳を参照しながら、その期間内で支払われた賃金の合計額を記載します。
なお、給与規定によって欄が分かれます。A欄は、月給や週給など、給料が一定期間で定められている場合に用います。B欄は、労働日数や時間、出来高で賃金が決まる場合です。なお、3カ月前までは時給、それ以降は月給というような場合はそれぞれ欄を区別し、「計」欄へ合算した金額を記入してください。
- :備考
特記事項があれば記入します。たとえば賃金の未払や給与締め日の変更、休業などです。
- :賃金に関する特記事項
毎月支払われる賃金のほかに、「3カ月以内の期間ごとに支払われるもの」があれば記載してください。
退職者に記載してもらう項目
2枚目に当たる安定書提出用(ハローワーク提出用)には、「賃金などの情報の記載内容に齟齬がないかの確認」「退職理由への異議の有無」が設けられています。これは、退職者が企業側の記載を確認し、記名押印または自筆による署名を行う欄です。退職前に必ず確認を取るようにしましょう。
※申し送り:以降、書き方に関する注意点などの見出しが続く予定です。文字数の関係上、今回はここまでとしております。ご了承ください。
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