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労基署調査対応

労働基準監督署の調査

労働基準監督署

1 労働基準監督署が行う調査とは

ある日突然、労働基準監督署から「労働条件の調査の実施について」などという題名の書面が届くことがあります。
これは、いわゆる労基署の”調査”です。
税務署や年金事務所も調査がありますが、労基署は事業主が労働基準法などの労働関係法令どおりに従業員に対して賃金を支払っているか、36協定や就業規則を届け出ているか、健康診断を実施しているか、年次有給休暇を法律以上の基準で付与しているか、必要な届出を行っているか、など事業主の労務管理を指導監督する役所ですので、調査は労働基準監督署の仕事の一つです。
気を付けたいのは、警察署や税務署と同じく最後に「署」が着きますので、事件の送致権を持っているということです。
いざとなれば、事件として立件して検察庁に送付することができますから、書面が届いたら、きちんと対応することをお勧めいたします。

労働基準法

2 労働基準監督署の調査の種類

労基署が行う調査の種類について、見てみましょう。

①定期監督

毎月一定の計画に基づいて実施する監督のほか、一定の重篤な労働災害または火災・爆発等の事故について、発生直後にその原因究明および同種災害の再発防止等のために行う監督を含む

②申告監督

労働者等からの申告に基づいて実施する監督
実際には申告監督でも労基署は定期監督ですと言われるのが一般的です。

③再監督

定期監督、申告監督の際に法違反を指摘した事業場のうち、一定のものについて法違反の是正の有無を確認するために行う監督

3 労働基準監督署の調査で実際に指摘される事項

実際に指摘されている項目を順に見ていきましょう。

①違法な時間外労働(労働基準法32条)

労働基準法では、労働時間が以下のように定めれらております。

  • 1日 8時間
  • 1週間 40時間(特例の場合は44時間)

これらの時間を超えて働かせてはならないことになっています。
ただし、例外があります。
「時間外・休日労働に関する協定届」(いわゆる36協定)を労基署に提出することです。
これにより、36協定に記載された時間を上限として時間外労働をさせることができるようになります。
調査の際には出勤簿も提出しますが、出勤簿上で時間外労働があるにもかかわらず、36協定が未提出の場合は指摘事項となってしまいます。
ちなみに、36協定は届書が受理された日から有効となりますので、注意しましょう。

労働基準監督署で指摘する時間外労働、つまり、残業時間とはどのくらいの時間を言うのでしょうか。
それは、36協定の上限値である45時間です。
特別条項付きの36協定を結び、労働基準監督署へ届出ていれば、45時間を超える残業も可能ですが、例え特別条項の範囲内を守っていたとしても労働基準監督署の調査では「過重労働による健康障害の防止について」と言う文書が発せられる可能性は高いです。
この文書が発せられますと、社内で労働衛生のことで話し合いを行い、残業時間抑制のための具体的方策を決め、それに基づいて実際に労働時間が減ったことがわかる出勤簿等を労働基準監督署に提出して監督官に確認してもらい、是正が完了します。
労働基準監督署の1回の調査で回答に要るする期間や労力はかなり大きなものとなり、社会保険労務士などの専門家への相談も必要になることがありますが、今後、長く持続させていくべき事業運営において、この機会に労働環境を整備するのも一考です。

②割増賃金の不払(労働基準法37条)

労基署の指摘で一番注意が必要なのは、やはり、この賃金不払いです。
ここでいう割増賃金の不払いとは、簡単に言いますと「残業代を払っていない」ということです。
調査の際には出勤簿と併せて賃金台帳も提示しますので、残業代を支払っているか否かは一目瞭然です。
労基署の監督官は、目の前で電卓を叩きながら未払いの残業代があるかどうかを確認します。
賃金台帳上の割増賃金などの残業代が0円の場合で、固定残業手当も支払われていない場合は、電卓を叩かずとも不払いは明らかですので、直ちに指摘となってしまいます。
割増賃金不払いで指摘された場合、その是正勧告(労基署の行政指導を是正勧告と言います)、過去に遡及して未払いの賃金を支払うことになります。
では、不払いの割増賃金とは、一体いくらになるのでしょうか。例を挙げてみます。
月給30万円の方で、1か月あたり10時間の未払い残業代を過去6か月分支払わなければならないとしますと、具体的な計算は以下となります。

(300,000円 ➗ 163.3(休日が土日祝日の場合の1か月の平均所定労働時間) ✖️ 1.25(割増率) ✖️ 10時間 ✖️ 6か月

= 13万7,783円

これが、20名いたとしますと、

13万7,783円 ❌ 20名 = 275万5,660円

となってしまいます。
1か月あたりの平均残業時間が40時間を超えていたり、人数がもっと多かったりしますと、その金額は更に莫大なものとなります。
労働基準監督署も指摘事項を発見しますと、「支払えなければ仕方ないですね。いいですよ。」とは決して言いません。
それには法的な根拠があるのです。
賃金については、労働基準法第24条において、以下の原則があります。

賃金支払いの五原則

① 通貨で
② 直接労働者に
③ 全額を
④ 毎月1回以上
一定の期日を定めて支払わなければならない

割増賃金の不払いは、労働基準法でいう賃金の全額払いの原則に反することになってしまいます。

また、割増賃金で忘れがちなのは、深夜手当です。
この手当は時間単価の25%を深夜労働時間に対して支給する必要があります。
仮にこの深夜労働が定時の時間(例えば18:00出勤、翌3:00退社など)であって、残業ではなかったとしても、時間単価の25%を支払わなければならいのです。
よく、深夜労働は150%で計算すると考えている方が多くいらっしゃいますが、8時間を超える残業代が125%、深夜労働が25%なので、結果として150%になるだけです。
ここに8時間を超えない労働時間がある場合は、25%のみの計算でなければ払い過ぎの可能性があるので、別々に計算することをお勧めしています。
深夜手当については、出勤簿上で午後10時以降に退社時刻の記録があるのにも関わらず、深夜手当を支払っていない場合は指摘となります。

しかし、もっとも深刻な問題は、これらの未払い賃金を支払った場合の従業員の反応です。
まとまった金額が全員に支払われれば、「この金額は何だ」となることは明らかです。
労働基準監督官への回答文書である是正報告書では、従業員への支払い名目までは指定されていませんので、「調整給」や「特別手当」などでも良いのですが、今まで前例がなく、かつ、その金額次第では、騒ぎが起こりそうです。
未払いを計算して支払った額が仮に6か月分としますと、時効は2年(法改正の関係では3年もあり)ですから、何のお金かが知られれば、「2年分支払え」という声が従業員から上がる可能性は高いです。
そうでなかったとしても、従業員の会社への不信感は間違いなく募りますので、労務管理上、大変よろしくない事態なのです。

労働条件通知書

③労働条件の明示違反(労働基準法15条)

これは、労働条件通知書や雇用契約書などで、労働条件を従業員に通知していないことです。
労働条件通知書の交付は法律上の義務、雇用契約書は民事上の契約ですが、雇用契約書に通知すべき労働条件が記載されていれば、雇用契約書でも差し支えありません。
また、法律上義務があるのは、雇入れ時の通知のみですので、昇給する度や、毎年度に書面を交付しなければならない訳ではありません。
ただし、基本給を下げたり、ある手当の支給をやめたり、休日を減らしたりした場合は、本人の同意を得る必要がありますので、合意したことの証拠として書面を作成して、従業員の署名押印をもらいましょう。
なお、もし、作成していないからと言って、労働基準監督署の調査の際に提出しないのも問題です。
直近の労働条件で労働条件通知書などを作成し、従業員に交付しましょう。

さて、労働条件を書面で交付する場合、必ず通知記載しなければならない項目があるのはご存知でしょうか。
それは、正社員の場合、以下となります。

① 契約期間に関すること
② 期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
③ 就業場所、従事する業務に関すること
④ 始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
⑤ 賃⾦の決定⽅法、⽀払時期などに関すること
⑥ 退職に関すること(解雇の事由を含む)
⑦ 昇給に関すること

上記のうち、⑦の昇給に関することは必ずしも書面でなくても良いことになっています。

有期契約社員やパートタイマーの場合は、明示しなければならない条件は少し増えます。
具体的には上記①〜⑥に加え、以下です。

① 昇給の有無
② 退職手当の有無
③ 賞与の有無
④ 雇用環境の改善に関する相談窓口

必須事項が記載されていない労働条件通知書や雇用契約書は労働基準監督署の調査で指摘される可能性がありますが、常日頃の労使トラブル防止のためにも法律どおりの書面を交わしましょう。

④健康診断の未実施(労働安全衛生第66条)

従業員には1年に一度、定期健康診断を受けさせなければなりません。
労働基準監督署の調査では、健康診断個人票の提出を求められることが多いです。
これは、健康診断の実施結果を一覧表にしたもので、通常、医師が作成するものですので、健康診断をお願いしている病院に相談してみましょう。
作成してくれることが多いです。
法律上、健康診断を受けさせなければならない従業員の範囲は決まっていますが、それは以下です。

 ~ 健康診断を実施しなければならない「常時使用する労働者」とは ~
パート、アルバイト等の雇用形態にかかわらず、下記①・②の両方を満たす場合には健康診断の実施が必要です。
① 1年以上の長さで雇用契約をしているか、または、雇用期間を全く定めていないか、あるいは既に1年以上引き続いて雇用した実績があること。
② 一週間あたりの労働時間数が通常の労働者の4分の3以上であること。

健康診断で、もう一つ注意が必要なのが、「特定業務従事者健康診断」です。
これは、主に深夜業などに従事する従業員を対象とするもので、定期健康診断の他に6か月に1度、受診させなければなりません。
深夜業の基準ですが、以下です。

週に1回以上、または、1か月に4回以上

この1回はたとえ1時間でも1回となりますので、午後10時以降の就労がある従業員がいる場合は、勤怠の集計時に気を付けましょう。
深夜業に従事する従業員がいる場合で、その従業員に6か月に一度の健康診断を受けさせていない場合は、これも指摘となってしまいます。

⑤ 就業規則の作成・届出違反(労働基準法第89条)

従業員数が10名以上の場合は、就業規則の策定と労基署への届出が義務となります。
ここで注意したいのが、就業規則は従業員に周知させ、かつ、いつでもその内容が確認できる状態でなければ、効力はありません。
届出で就業規則が有効になる訳ではないので、注意しましょう。
また、就業規則を届け出るためには、労働者代表の選出とその労働者代表の意見書が必要です。
労働者代表は、労働者の中から選出されなければならず、管理職の方はなれません。
さらに、事業主が労働者代表者を指名してはなりません。
あくまでも、労働者間で民主的な手段で決められる必要があるのです。
例えば、「立候補とその信任による決定」です。
誰かが立候補したとして、その立候補した人で良いかどうかの多数決で決める場合などがそれに当たります。
正しい手続きを踏んでいなければ、就業規則自体が無効となる可能性も否定できませんので、しっかりとした手続きで届出を行いましょう。
就業規則の策定で、ご注意いただきたい事がございます。
それは、取り敢えずのものを用意しないということです。
就業規則は一度施行してしまうと、条件を悪くすることは難しいです。
原則として、不利益変更が禁止されているためです。
ですので、最初の就業規則は社会保険労務士などの労務の専門家にお願いすることをお勧めいたします。

⑥安全衛生管理体制

50名以上の事業場では、衛生管理者と産業医を選任する必要がございます。
また、製造業や運送業など一定の業種では安全管理者も選任する必要が出てきます。
加えて、これらの選任をした場合は、労基署への届出も必要となります。
以上のことがなされていない場合は、指摘となってしまいます。
また、衛生管理者は国家試験ですので、もし、有資格者がいない場合は、揃えるのは簡単ではありません。
50名に達する前に適正な従業員に講習を受けさせ、確実に試験に合格しておいてもらいましょう。

⑦ 最低賃金法

毎年10月に最低賃金が見直されていますので、ご存知の方は多いかと思います。
例えば、令和3年10月適用の東京都最低賃金は1,041円ですが、支払っている給与がこの金額を下回っていますと最低賃金法違反となってしまいます。
月給者の方もこの最低賃金は適用されます。
最低賃金を超えているかどうかを確かめるための計算方法は以下です。

(月給+諸手当)➗1か月の平均所定労働時間

※ 諸手当には、通勤手当、家族手当、精皆勤手当は含まれません。

この金額を下回っている場合も指摘となってしまいます。
この指摘がありますと、不足分を遡って対象の従業員に支払うこととなりますが、名目を伏せたとしても金額やタイミングによっては、従業員から不信感を抱かれることになるでしょう。

年次有給休暇

⑧ 有給管理簿(労働基準法第39条)

年次有給休暇を10日以上付与された場合は、次の付与日までに5日以上を付与しなければならない。

これは労働基準法の改正で追加された条文ですが、罰則付きの条文(ちなみに労働基準法はほとんどの条文が罰則付きです)ということで、大きく報道されてたため、ご存知の方は多いかと思います。
有給管理簿で記録しなければならないのは、以下です。

① 基準日
② 取得した日
③ 取得した日数

上記3点が記録されている必要がございます。
①の基準日とは、毎年、年次有給休暇を対象の従業員に付与する日を指します。
②の取得した日とは、付与した年次有給休暇を従業員が実際に使用した日を言います。
③の取得した日数とは、そのままですが、②の取得した日に何日間の有給を使ったかということです。
基準日は雇入れ日を基準としている事業主様が多いかと思いますが、基準日もバラバラなことが多く、また、年次有給休暇は時効が2年であるため、毎年、新しく付与される日数と残日数、消化される消滅する日数が存在し、管理は意外と大変です。

4 当事務所としての対応

労働基準監督署の調査は、現在、増えつつあるのが当事務所としての実感です。
決して対岸の火ではありません。
労働条件の調査の文書が届く前に、自社の勤怠管理、給与計算、各種届出、有給の付与、その他労務管理を確認しておきましょう。
また、当事務所では、調査の文書が届いた時点で、どこに問題があり、何をすれば問題ないのかについて、調査前に対応できることの提案や支援をさせていただいております。
労働基準監督署の是正勧告書や指導票を受理してからの対応も可能ですので、お気軽にご相談ください。