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防犯を科学するシリーズ その5 あおり運転対策

あおり運転

1.あおり運転の被害者は、最後まで被害者でいられるか!?

最近、あおり運転で逮捕されているドライバー、目立ちますね。
ですが、あおり運転自体は、急に増えてきたわけではありません。
みなさんも、車の後ろにピッタリくっついている車や幅寄せしている車を見たことはあるでしょうし、実際にこのような経験をお持ちの方も少なくないでしょう。

テレビでニュースを見ている限り、あおられた側は被害者として、取り沙汰されていますが、本当に最後まで被害者でいられるかは、あなたの行動次第なのはご存知でしょうか。
ここで申し上げているのは、あおられた方の運転の仕方に問題があるとか、あおられても仕方ないことをしたとかということではございません。

 

2.あおり運転のリアル再現

では、実際にあおり運転のシーンを再現してましょう。
ここで登場する人物は普通のサラリーマンであるAさんです。
Aさんは、あおられた側で、なぜ相手があおってきたかが、よくわからない状況だとします。
とある片面二車線道路。
Aさんは休日よく利用するルートを運転しています。
今日は友人とのゴルフ練習の約束が入っています。
少々遅れ気味で家を出ました。
順調にいって10分遅れ、若干急いでいます。
ふと気が付くと、バックミラー越しに車がぴったり張り付いているのが見えました。
この時の速度は約50キロ。
「えっ。」
Aさんは、一瞬たじろぎますが、同時に「あおってんじゃねぇよ。」とカチンと来ます。
バックミラーに映る車を睨みながら、車線も変えず、スピードもそのままです。
その数秒後、後ろの車は、左側の走行車線から、Aさんの車をフルスロットルで追い越し、追い越したと同時に、幅寄せ、急ブレーキで、進行方向をふさいできました。
「危ない!」と反射的にAさんも急ブレーキ。
あやうくぶつかるところでした。
相手の男(こちらはBさんとします)が車を下りてきます。
Aさんも、結構頭にきてますが、どこかに冷静さも持っています。

 

3.急停車後のトラブル

さて、Bさんはこの後、どんな行動に出てくるでしょう。
問題に発展しそうな、Bさんの典型的行動は、次のような場合です。
①いきなり、Aさんの車のドアを蹴飛ばしてくる
②窓ガラスの隙間をめがけて、唾を吐いてくる
このようなとき、ある程度の冷静さを持っていたAさんは、どうするでしょうか。
普段はまじめなAさんですが、今日は奥さんと些細なことから喧嘩をしています。
遅れた原因もこの喧嘩にあり、若干イライラしています。

そんな背景もあり、ドアを開けて、Aさんは車を降りてしまいます。
相手の男Bさんは、興奮状態ですから、いきなり胸倉を掴んできました。
反射的に、Aさんも相手の胸倉を掴みました。
もちろん、Aさんには攻撃の意図はないので、胸倉を掴んだのは防御としての行動ですね。
ここまで来たら、Bさんは、Aさんに殴りかかってくるでしょう。
Bさんは「何、割り込んでんだよ。このやろう!」
Aさんも続けます。「割り込んだのはお前だろ!」
次の瞬間、BさんはAさんに殴りかかりました。
Aさんも簡単に殴られる訳にはいきませんから、手で防御します。
でも、攻撃は防御より勝るのが一般的ですので、Aさんは数発、Bさんに殴られてしまいます。
Aさんは、あくまでも被害者ですから、殴り返すまでに至らず、防戦一方です。

 

4.通行人による110番通報

こんな状況が起きたら、通行人から110番通報される可能性が高いです。
「〇〇管内、交通上のゴタから、殴り合いの喧嘩。110番入電中。」
などといった無線を聞きつけたパトカーが間もなくやって来ました。

Bさんは、現場に来た警察官に早速確保され、パトカーに乗せられて、どこかへ向かいます。
ホッとしているAさんにも、警察官は「何が、あったんです?」と聞いてきました。
更には「あ、ケガしていますね。救急車呼びますか?」とも言われます。
Aさんは、このくらいのキズで病院なんて大げさだと思い、「とりあえず、病院に行くほどではないんで。」と救急車の要請を断ります。
簡単に事情を聴かれると、Aさんは「署まで、来てもらって良いですか?」と警察署への同行を求められますが、Aさんも、そのまま帰れるわけがないことは、状況から察していますので、パトカーに乗って警察署まで行くことにしました。

 

5.警察署の取調室

〇〇署の中庭に到着し、パトカーを降りてAさんが案内されたのは、刑事課です。
Aさんは、「面倒なことになったな。被害届だとか、現場検証とかかな。どのくらい時間かかるかな。今日の休みはこれでおしまいだな。とんだ一日だ。。。」などと考えながら、取調室に案内されます。

取調室に入ると、先ほどAさんに殴りかかった男が、警察官に何やら事情を説明している声が、ちょっと離れた別の取調室から聞こえてきます。
「あいつに割込みされた。無礼な運転をする男だ。」などと大声で文句を言っているようです。
Aさんは、「何言ってんだ。割り込んでなんかいないし、むしろ、いきなり俺の車を停めて、ドアを蹴っ飛ばしてきて。挙句の果てに殴りかかってきた。お陰で、口は切れて血が出ているし、絶対に許さないからな。」などと考えています。

しばらくすると、刑事らしき男が入ってきます。
「何があったんです。」との質問に、「また一から説明かよ。」と思いつつ、Aさんは、事の経過を説明しました。怒りの感情を抑えながら。
刑事は、「そうですか。わかりました。ちょっと待っててください。」と取調室を出ていきます。
その代わり、先ほどのパトカーで隣に座っていた警察官が入ってきます。
Aさんは、幾何の不安を覚え、その警察官に「私、被害者ですよね?あの男、許せません。」と訴えます。
ところが、先ほどまで優しかったその警察官の態度が、Aさんには微妙にひっかかりました。「相手にも言い分があるようですね。」と、少々冷たい感じです。
Aさんは思うでしょう。「あー、この警察官、全然わかってないな。この状況を。」
そして、「こいつと話しても無駄だ、さっきの刑事、戻ってこないかな。相手を訴えると言ってやろう。」と考えます。
しかし、ここまで読んだ方で、私の過去のブログを読んだことがある方は、あの時と同じ展開だな。と鋭く感づいているでしょう。続けます。

 

6.どちらが加害者か

10分か、15分か経過したころ、さっきの刑事が取調室に入ってきました。
そして、こう、Aさんに言います。「えっと。あなたが謝るんだったら、相手も謝ってもいいって言ってるけど、どうする?」
「はぁぁぁ?」とAさんは、思わず声に出します。
なぜなら、Aさんは完璧な被害者だからです。
Aさんは、例え相手が謝ってこようとも、絶対に許さないという強い気持ちでいるのですから、自分が謝るなんてことはみじんも考えていません。
とは言え、何とか真実を分かってもらわなければなりません。
ガッカリしたり、ショックを受けている場合ではありません。
気を取り直し、あなたは説明を始めます。
興奮をできる限り抑えながら。
「・・・あのですね。私、口が切れてケガしているんです。今から病院に行こうとも思ってます。あの男に私は、片面二車線道路で車を強引に停車させられたんですよ。降りてきて突然ドアを蹴っ飛ばしてきたんです。それで私は、車を降りましたが、そしたら、いきなり殴りかかってきたんです。それを手で防いでいただけですよ。」と。
それを聞いた刑事は、「そんなの分かっているよ。」と言わんばかりに苦笑いを浮かべながら、「状況は大体分かっています。あなたがケガをしているのは分かりますので、すぐにでも救急車を呼ぶことはできます。ただ、あなたは車を降りて相手の男の胸倉を掴んでいますね。」この言葉に、すぐさまAさん反応します。「いや、先に胸倉を掴んできたのはあっちですよ!それに、・・・。」そこで刑事があなたを制します。
「まぁ、聞いてください。」
Aさんは、「先に向こうが」というフレーズの無力さに気づきます。この状況で後先とかの議論では同等になってしまうと。。。まるでただの喧嘩だ。。。
刑事は続けます。「相手の男の言い分ですが、「強引な割込みで、ぶつかりそうだった。運転を注意しようと車に近づいて停車させたら、いきなり胸倉を思いっきり掴まれた。殴り合いになったが、向こうのパンチは当たらなかった。自分のYシャツが破れてる。胸のあたりが痛い。病院に行きたい。傷害だ。シャツも高いので、器物損壊だ。それに弁償もさせてやる。」と凄い剣幕です。そして、当然に被害届を出すとも・・・。」Aさん、この先はほとんど聞こえなくなってきます。
あまりにも予想外の展開で、Aさんは気が遠くなりそうです。
(俺が・・・、俺が加害者だと・・・!?。どうなってるんだ・・・。これは夢だ。)
そして、刑事は更に続けます。「もちろん、あなたの方が被害の度合いは強いように見えます。向こうは明らかに傷害の被疑者です。ですが、それと同時にあなたは少なくとも暴行の被疑者、相手が診断書を取れば同じ傷害の被疑者です。あとは、どちらが重いかです。一部始終の目撃者は今のところ居ません。どちらが悪いかを決めることができるのは、裁判官です。逮捕されて身柄拘留されて、数か月後、法廷で勝負しますか?そんなことをして、会社は大丈夫ですか?そして、家族はどうなりますか?もちろん、お互いが絶対に許さないということであれば、こちらは仕事ですので、事務的に処理いたします。」
ここまで言われると、Aさんもようやく状況を理解してきます。
そう、警察では6:4くらいで向こうが悪いくらいにしか見ていないと。
事実は、どうかんがえても、10;0で向こうが悪い、どんなに譲っても9:1だ。それを警察ではお互いが被疑者だと思っている。。。
警察はAさんの人生を掛けた訴えを、話半分で聞いています。
それは、こんな感じです。
「自分を悪く言わないのは世の常、どちらも喧嘩の当事者、ケガをしている方が喧嘩に負けたんだろう。大人の喧嘩は事件とするなら両方を被疑者、だが、両方謝るなら、良しとするか。」
このように事態を解釈されると思っておきましょう。
さしたる根拠もなくBさんの言い分を信用せず、Aさんのことを100%信じてもらえるはずもありません。
Aさんは、思いつきます。そして、
「刑事さん、これって110番ですよね。通報者が見ているはずです。」
と自信ありげに提案します。
起死回生のチャンスです。
しかし、返ってきた答えはこうでした。
「110番の内容は、「路上で殴り合いの喧嘩をしている。早く止めてやってくれ。」でしたよ。」
Aさんは、一縷の望みを絶たれ、真っ暗になります。
「人通りの少ない国道、これから目撃者を探すのは難しそうだ。ドライブレコーダーもついているが、前方しか映ってないはずだ。あいつとやりあったのは、車の横だから、これまた厳しそうだ。」
とも考えます。
そして、英断に踏み切ります。「謝らせてください・・・。」

 

7.あおり運転対策~事件回避の方法とは

 

なんだか涙が出てきそうな話ですが、これが現実です。
「自分はそうならない。」と思うあなた。
会社の従業員さんは大丈夫ですか?
トラック運送業やタクシー会社など、従業員がドライバーとして勤務時間の大半を過ごす会社の経営者又は人事部門の方。
ご自分が大丈夫でも、大切な従業員さんが巻き込まれたらどうでしょう。
他人事ではありませんね。対策が必要です。

では、このような事案、どうすればよいのでしょう。
ポイントは3点です。

ポイント1

車から降りない

車から降りて良いことは起きません。
仮にあなたが、武道の達人だったとします。
相手のパンチをひらりとかわし、瞬時に相手の腕を取って、鮮やかに抑え込んだとします。
相手は「あいたたた、何すんだこの野郎。。。」そこから警察がそれぞれ事情を聴きますから、ケガをされられただの。。。何だか、展開は良くありません。
相手がどんな説明をするかわかりませんので。

ポイント2

110番通報

即座に110番通報しましょう。
このような相手は、直接話し合いをするべき相手ではありません。
車内と車外という、お互いを完全に区切られた状態で、警察を呼びましょう。

ポイント3

ハザードランプを出す

常日頃から、ハザードを出したり、手を挙げたり、軽く会釈したり、車同士の簡単なコミュニケーションを取っておきましょう。
少し強引な入り方をして、相手に多少いじわるされても、即座にハザードランプを出しておけば、意外と収まるものです。
あなたはハザードを出すとき、車内でどのような罵声を相手に浴びせてても、相手には、それは当然に聞こえませんし、むしろ相手は「ハザード出して謝ったか。。。まぁ、許してやろう。」と受け取ることが多いものです。
わずか、数秒、たった1回の意思表示です。
何も減りませんし、損もしません。
それに比べて、たったハザードを2~3回出すというその行為によるリスクヘッジは計り知れません。

いかがでしたでしょうか。
経験から学ぶことはプライスレスですが、世の中には経験しなくてよい、むしろ、経験してはならないことが沢山あります。
明日は我が身という落とし穴は、そこら中に存在するのです。
わずかな注意と少々の思いやりで、ごく当たり前の穏やかな人生を送りましょう。

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