キャリアアップ助成金(正社員化コース)の注意点 その2
昇給5%要件は慎重な計算が必要
前回キャリアアップ助成金について注意点を紹介しましたが、他にもまだまだ注意点(落とし穴)があるので引き続きお伝えいたします。
今回は昨年度から追加された転換時の賃金5%UP要件について説明いたします。
これが結構な曲者なんです。
正規転換前後6カ月の賃金総額が転換前と転換後を比較して5%以上増額していることが必要となります。
6ヵ月の総額で比較するので必ずしも正規転換時に5%以上アップさせる必要はありません。
あくまでも6カ月の総額です。
昇給5%の計算対象となる手当
転換前後の6か月のその総額を計算する上で、計算に含める手当と、計算から除外する手当があります。この判断は支給・不支給を決定する重要なキーにもなりますので、注意が必要です。
基本的には基本給や定額支給される手当は計算の対象となりますが、残業代や歩合給、皆勤手当のように毎月の状況により変動するものは除外します。
定額で支給される手当でも実費補填であるもの、実態として労働者の処遇の改善が判断できないものについては、その名称を問わず除外します。
例えば通勤手当や食事手当、通信手当などは除外して計算します。
では問題!!
定額支給の「固定残業代」は含めるのか除外するのかどちらになるでしょうか?
固定残業代は基本給にくっついてるイメージですが、答えはNOです。
固定残業代も計算から除外します。
では住宅手当はどうでしょう?
基本的な賃金ではないのでこちらも除外します。
ただし労働者の住居に関係なく一律に定額を支給している場合などは計算の基礎に含めます。
一律支給ですから。
難しいですね。
手当は名称ではなく実態で判断
あくまでも基本的な賃金がアップしたかどうかが判断基準になります。
基本給、職務手当、職能手当、役職手当などが計算の基礎になります。ただ手当の名称ではなく実態で判断しますので判断を誤らないように注意して計算するようにしてください。ちなみに計算した結果が4.99%だった場合、「ほぼ5%じゃん!四捨五入したら5%!だからOK!」ではないです。
完全なNGです。
確実に5%台にならないとダメです。
また6カ月の総額が要件を満たしていたとしても基本給や定額で支給されている手当が低下している場合は支給対象外となります。要件を細部まで確認し進める必要がありますので気をつけてください。
計算が苦手な方は、厚労省のHPに「賃金上昇要件確認ツール(エクセル)」がありますので入力すれば自動で計算してくれます。
提出書類にもなりますのでご活用ください。
賞与はさらに要注意!?
さらに問題なのが賞与です。
賞与を計算に入れることが出来るかどうかについては、更なる注意が必要です。
正社員以外は賞与を支給していないので転換前は賞与を支給していなかった、正社員になったので賞与を支給した。
この場合、計算の基礎に入れてもよさそうなものですが確認が必要で、超重要なんです。
賞与は就業規則次第の書き方が明暗を分ける
なんと就業規則の規定の表記(書き方)次第で判断が分かれます。
正社員の就業規則だけに賞与支給の規定があるからというのでもダメです。
就業規則に支給対象者及び支給時期が明記されており、それに基づき原則として賃金算定期間中に支給された賞与が算定の対象に含まれます。
賞与については就業規則(賃金規程)に支給時期、支給対象者が明記されていることが必要です。
さらに賞与の支給時期が「夏季・冬季」「年2回」はダメです。
「〇月〇日に支給する」「〇月に支給する」
と支給月まで規定していることが必要なんです。
「賞与を支給することがある」はOK?NG?
具体的に、どのような条文がNGなのか、ちょっと挙げてみましょう。
「賞与は原則支給しないが、会社の業績により支給することがある」→NG
「賞与を支給することがある。」→NG(の可能性大)
「賞与は原則支給する。ただし・・・支給しないことがある。」→OK
これらの違い分かりますでしょうか?
賞与を支給することが前提になっている規定(書き方)でないとダメということなんです。
賞与については他にも確認事項がもっとありますが…、キリがありませんので、ここまでにしておきます。
要は「賞与を計算の対象にする場合、ものすごく注意して要件を確認する必要がある。」ということを覚えておいてください。
この判断を誤ってしまって5%要件がクリアできなければ、もちろん助成金は不支給となってしまいます。
詳しくは厚労省のHPにもある「キャリアアップ助成金のご案内」にも記載があります。
ただ、難しくて見ても分からない…。って方も多いと思います。
助成金センターへの問い合わせ
その場合は労働局助成金センターの担当者にこの場合はどうなのかと直接聞いてみることが良いと思います。
ここでも注意点です。
助成金センターの職員すべての方が助成金に詳しいとは限りません。
異動してきたばかりの方や知識が未熟な方もいます。
質問に対して返答があいまいだったり、的確でなかったり、自信がなさそうな場合は、時間をおいて別な方に再度質問するのが良いと思います。
もしくは別な都道府県の助成金センターに連絡して聞いてみるのもありです。不支給になったとき、「あの時こう言われたから。」と言っても判定は覆りません。
慎重に確実に落とし穴に引っかからないように対応していくことが助成金申請には必要なんです。
言うまでもありませんが、助成金申請の代行に関する当事務所へのご相談は大歓迎です。
アストミライ助成金担当社労士
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