キャリアアップ助成金「正社員化コース」の不支給要件とは
キャリアアップ助成金「正社員化コース」の不支給要件
(R2.1.4記事改訂)
今回は、助成金の中でも知名度がかなり上がりつつあるキャリアアップ助成金(正社員化コース)の注意点について、再確認します。
以下は、助成金が不支給になってしまう主な場合です。
再確認の意味で、よくある不支給要件を抜粋してまとめてみました。
①解雇等、事業主の都合により離職させた場合
転換前6ヶ月から転換後6ヶ月の間、つまり、1年間の間に解雇があってはなりません。
注意すべきは、「事業主都合の離職」は、本人の申し出による退職以外を意味するということです。
例えば、適正のない従業員に、話し合いで辞めてもらった場合、ずばり、事業主都合の離職という判定になります。
また、従業員側から「会社都合での退職にして欲しい」とお願いされることもあります。
これは、自己都合の退職は、失業保険の給付に制限があり、すぐにもらえない(約3カ月のペナルティ)ため、従業員側から会社都合にして欲しいと頼まれるわけです。
辞めてもらう際のせめてもの恩情、というお気持ちもわからなくはないですが、助成金の要件に引っかかるということもありますが、やはり、事実に反する内容で離職票を作成して失業保険を受給させてあげるのことは良い話ではありません。
②労働保険料を納入していない場合
年に一度の労働保険の年度更新が毎年6月にやってきます。
このタイミングで、確定保険料を計算し、次の年度の概算保険料を支払うことになりますが、この手続きを怠っていますと、労働保険の滞納ということなります。
助成金の不支給要件ではありますが、労災保険や雇用保険は従業員を守るための大切な保険です。
手続は必ず行いましょう。
③労働関係法令の違反があった場合
労働基準法は、そのほとんどが罰則付きの条文です。
この度の法改正で「年次有給休暇の5日付与」が罰則付きで有名になりましたが、有給休暇を従業員から請求されたにも関わらず、これを付与しなかった場合は、もともと罰則付きの条文です。
これも助成金の不支給要件というよりは、企業の力はマンパワーであることを考えますと、コンプライアンスは重要です。
④雇入れの時点で正社員として約束している場合
「6カ月間は有期契約と言っても試用期間みたいなものだから」や「問題がなければ6カ月後には正社員にしてあげるから」などといった言動が、ここでいう「正社員としての約束」に当たります。
6ヶ月後に正社員になれるというのは、契約社員ではありませんので、そもそも助成金の対象にはなりません。
それに、雇入れから数カ月たったころに、問題社員であることが分かったり、事業の縮小などで業務が減少したりした場合、契約期間の終了で退職してもらうことはできません。
⑤対象者が支給申請日に退職している場合
正社員に転換後6カ月が経過し、助成金の支給申請をする段階で、対象者が離職していたら、やはり、これも助成金の対象とはなりません。
ただし、支給申請書類が受理された後の離職であれば可能です。
⑥対象者が1年以内に定年で退職する場合
キャリアアップ助成金「正社員化コース」は、有期契約労働者の身分を安定させるという雇用政策です。
すぐに定年を迎える方を転換しても、助成金の主旨に反しますから支給の対象とはなりません。
⑦事業主や取締役の3親等以内の親族である場合
こちらも⑥の主旨を考えれば、当然に対象とはなりません。
⑧転換日以降に雇用保険・社会保険に未加入の場合
転換日以降、未加入ということは、加入要件を考えますと、あってはならないことということなります。
1週間の所定労働時間は20時間で雇用保険、30時間で社会保険に加入しなければなりません。
正社員であれば、この時間は超えることになります。
⑨キャリアアップ計画書提出前に正社員転換している場合
助成金は、計画書を労働局に提出し、認定を受け、計画書通りに実行することにより支給されます。
労働局の認定を受けていないこと(無期契約社員や正社員への転換)を実施しても助成金の対象とはなりません。
転換後に初めて、「以前に転換したことがあるので助成金を請求します」と申告しても助成金は出ないということです。
■前日までに提出!
キャリアアップ計画並びにキャリアアップ計画書(変更届)については、取組の前日までに提出する必要があります。
以前は提出と転換が同じ日でも認められていましたが前日までの提出になりました。
同日だと不支給となります。
郵送の場合は書類到着日が提出日になるので余裕をもった取組みが必要です。
例)10/1転換の場合、前月の9/30迄に提出しなければなりません。
既に提出済のキャリアアップ計画書については期間を要確認です。
計画期間は3年~5年です。
期間を過ぎての転換は不支給となります。
期間が長いので、うっかりしやすいところです。しかし、1日でも経過していれば計画期間中の取組みとはなりません。
⑩就業規則に助成金要件を記載していない場合
助成金は、就業規則どおりに人事労務管理が行われているかということが基準の一つとなります。
従いまして、就業規則に記載していなければ、就業規則どおりでないということなり、支給の対象とはなりません。
■正社員と認められない可能性あり!
所定労働時間が就業規則において明確でなく、他の正規雇用労働者がいない場合、正社員に転換したとしても正規雇用労働者とは認められません。
つまり正社員が一人も存在しない場合で、キャリアアップ助成金を活用して初めて正社員転換する場合、就業規則に所定労働時間の定めがないと正規雇用労働者としては認められません。ただし、無期扱いになる場合はあります。
⑪転換前6か月間の賃金より5%以上増額してない場合
これは、賃金アップの要件です。
ただ単に5%上げても要件に該当しないこともあります。
5%の対象となる賃金は、固定的賃金であることが求められますが、対象賃金は厳しく見られます。
また、1ヶ月でみると5%上がっていても、6ヶ月でみると上がっていなければ、要件を満たさないさず、不支給の可能性が高いです。
■賃金規程に記載されていない手当を支給すると危険!
5%要件に含める「定額で支給される諸手当」は、転換後については就業規則
等において、手当の決定及び計算の方法(支給要件を含む)が明記されている
必要があります(転換前については就業規則等への記載にかかわらず転換前
6か月間の賃金に含めます)。
つまり就業規則(賃金規程)にない手当を支給している場合、転換前は賃金に含めるが、転換後は含めないということ。
5%要件の算定に大きく関わるので就業規則(賃金規程)がきちんと整備されていないと昇給率が5%に達していないと判断され、不支給になる可能性があります。
■基本給が5%UPしていても固定残業代がある場合は注意!
転換前後において、固定残業代の総額又は時間相当数を減らしている場合、「定額で支給される諸手当」に含める場合があります。具体的には以下のとおりです。
(例1)基本給増額・固定残業手当減額
転換前:基本給20万円、固定残業代5万円(合計25万円)
転換後:基本給21万円、固定残業代4万円(合計25万円)
(例2)基本給+手当増額・固定残業手当減額
転換前:基本給20万円、固定残業代5万円(30時間分)(合計25万円)
転換後:基本給20万円、固定残業代3万円(20時間分)、手当2万円(合計25万円)
(例3)基本給増額・固定残業手当の時間単価減額
転換前:基本給20万円、固定残業代5万円(32 時間分)
転換後:基本給21万円、固定残業代5万円(30.5 時間相当分)
転換後の基本給UPに合わせて固定残業代も比例してUPさせる必要があります。
いかがでしょうか。
よく考えれば当たり前のようですが、意外にも盲点だったりしますので、注意が必要です。
キャリアアップ助成金「正社員化コース」は、1名あたり57万円が支給されます。
売上ベースで粗利57万円は無視できない数字です。
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アストミライ助成金担当社労士
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